なめしの勉強と革の種類

レザークラフト基礎

一口に革と言っても色んな種類があり、それぞれ独特の特徴をもっています。

革の特徴を理解し作りたいものにあった革を選ぶことは、モノづくりをする上で重要なファクターであり上達への近道となります。

まず革の特性を学び、自分の作りたいもの適した革を選べるようになりましょう。

スポンサーリンク

皮から革へ~なめしの勉強~

動物の皮膚を剥いだあと、何の加工もなされていない原皮の状態のものを「皮」 と呼び、その皮に 「なめし」 と言われる防腐処理を施し物づくりの材料として再生したをものを「革」 と呼びます。

なめしの目的

・防腐処理(耐酵素性・耐薬品性
動物の皮はそのままだとバクテリアに分解され腐敗してしまいます。
なめし剤を付与することで、革の主成分であるたんぱく質に化学変化を起こして変性させ腐敗が防止されます。

・耐熱性の付与
通常、哺乳類の皮の耐熱性は62℃~63℃前後で、その温度を超えると皮は収縮してしまいます。
なめしを行うことで耐熱性が上昇し、牛革タンニンなめし革であれば耐熱性は75℃~90℃、牛革クロムなめし革であれば95℃~120℃まで上昇します。

・革らしさ、しなやかさを与えるため
一般に皮はそのままだと固くなったり腐敗したりします。それらを防ぎ、皮を柔らかくして耐久性や可塑性を加え、温かみのある感じをだすことで革として長く利用することが可能になります。

上記の効果を与えるなめしには主に「タンニンなめし」、「クロムなめし」、「コンビネーションなめし」、「油なめし」などがあります。

タンニンなめし
「ベジタブルタンニンング」 とも呼ばれる、樹木や植物などから抽出した天然の渋を利用して革をなめす製法です。
メリットとして

  1. 型崩れしにくく丈夫
  2. 染料の吸収がよく染色しやすい
  3. 吸湿性に富む
  4. 使い込むほどに艶や馴染みがでる

など多くの利点があります。
また飴色になるというのがタンニンなめしによる革の特徴です。

デメリットとしては、タンニンを革の中心部分まで浸透させるためにタンニン濃度を徐々に上げるなければならず、 そのためには30以上の工程が必要となります。
タンニンなめしの革はそうした手間の多さから単価が高いレザーなのです。

クロムなめし
硫酸クロム、重クロム酸ナトリウム、カリウム塩、クローム塩などの金属を用いた科学的な製法です。

メリットは

  1. 伸縮性が良い
  2. 柔軟でソフト感がある
  3. 吸水性が低く水をはじきやすい
  4. 耐久力がある
  5. 比較的熱に強い

などと、タンニンなめしとは異なる利点があります。
なめした後の地色が灰色なため、基本的には染色され使用されます。短時間でなめすことができるため、タンニンなめしに比べ低コストであることも特徴の一つです。

デメリットとしては、なめし工程で使うクロム物質が焼却により化学反応を起こし、人体に有害な6価クロムに変化するので処分する際には注意が必要だという問題があります。

混合なめし(コンビネーションなめし)
タンニンなめしとコンビネーションなめしを組み合わせたなめし方法です。タンニンなめし剤とクロムなめし剤の割合によって必要な特性に設計できる科学的ななめし方法であるため、作りたい革の用途や目的によって割合を自由に変えることが出来ます。

野球のグローブに使用されている牛革グローブレザーはこの混合なめしでなめされています。一般的にはクロームなめし→タンニンなめしの順序でおこない、逆にタンニンなめし→クロームなめしをすることを「逆コンビネーションなめし」といいます。

タンニンなめしほどの仕上がりににはなりませんが、タンニン風レザーの感じを出すことが可能なうえ、クロームなめし程度のコストで製作できるので、現在のファッション業界で最もポピュラーななめし製法となっています。

油なめし
革を動物の油に漬け込むことでなめす製法。非常に柔軟で吸水性・耐水性が高く、革としては珍しく洗濯も可能です。油なめしが採用されている代表的な革にセーム革が挙げられます。

代表的な革の加工~革の種類~

上記の方法でなめされた革はその後仕上げ加工を受け流通する。仕上げ加工には様々な方法があり、その加工法により風合いが大きく変わってくるので、好みに応じて使い分けられるよう覚えておきましょう。

ここでは各仕上げ方法と、仕上げ方法別の革の特徴について触れていきます。

素仕上げ
着色などが一切なされていない、なめしただけの革。革の劣化、変色を防ぎ美しさを保つため、オイルを塗りサンドペーパーで表面を滑らかにする工程のみ行います。素仕上げの中でも最も人気で代表的なものがヌメ革です。

ヌメ革
タンニンなめしを施した牛革で、「ベジタブルレザー」 とも呼ばれています。余計な加工をしていないため革そのものの味わいがあり、経年変化を楽しむことができます。使い込んでいくうちに、肌色から着色では得られない味わいのある飴色に変化していき、色が濃くなっていきます。
一方で、簡単ななめし加工しかなされていないので、水にも油にも弱く、一度しみ込むとシミになってしまうという欠点もあります。

アニリン仕上げ
顔料を含まない染料と薄くクリアな仕上げ剤を使って仕上げた革。革の風合いを活かしつつ着色され、透明感がありキメ細かく、やわらかな手触りの革になります。

顔料仕上げ
下地の革の色を完全に抑えるため、発色のよい色革になります。その代わり革の風合いといったものは失われます。

オイルド仕上げ
革にオイルを染み込ませ、どっしりとした重厚感のある発色としっとりとした手触りが特徴です。オイルド仕上げには様々な方法があります。

オイルドレザー
革をなめした後にオイルに漬けてから、さらに油分を加えたもの。 水をよくはじくため、ブーツや登山靴などのアウトドア用品にに多く使われる。

ロウ引きレザー
革にロウを染み込ませたり、吹き付けたりする仕上げ方法。ロウ引きをすることで、革の表面や繊維が保護されます。購入時はロウが目立ちかなり白いですが、使い込んでいくと次第にロウがはがれ落ちて、味わい深いものになります。

ブライドルレザー
カウハイドをタンニンでなめし天然染料で染色した後、獣脂や蜜蝋をブレンドしたワックスをブラシで何度も革に刷り込ませていくことで作られます。ロウ引きレザーの一種で革の表面にロウを刷り込むことで耐久性、撥水性が増している頑丈な革です。ブライドルレザーの製造には長いものでは1年以上の期間がかかるため非常に価値のある革として取引されます。

グレージング仕上げ
染料やコーティング剤を一切使用せず、タンニンなめし革の銀面を磨くことにより革に光沢をもたせる加工法。ヌメ革を購入し、ウッドブロックやガラス板で擦ることで加工が可能なので、個人でも比較的簡単にできる加工法のひとつ。

揉み加工仕上げ
油分の多いタンニンなめしの革を揉むことでシボを作り出した革。グレージング加工同様個人でも加工可能だが、かなり手間がかかる。方法は「レザークラフト技法事典Ⅱ」参照。。※シボとは皮革製品における表面のシワ模様のこと。

シュリンク仕上げ
揉み加工とは違い、薬品を使用し革を縮めて銀面にシボを作り出した革。

型押し仕上げ
その名の通り革の銀面に型を押し付けた革。ワニ革など高価な革は手が出しにくいが、型押しすることでイミテーション品ではあるが比較的安価で入手が可能になる。

このページを作成するにあたり以下のブログを参考にさせて頂きました。非常に細かく革の知識が書いてあるので是非参照してください。

オラ、革ジャンが好きだ!

タイトルとURLをコピーしました